不動産の価格が争点になる裁判や調停では、「不動産会社に査定してもらった書面を証拠に出せばよい」と考える方がいます。しかし、これは通用しません。裁判の場で価格を主張するには、不動産鑑定士による鑑定評価書 が実質的に必要です。本稿では、裁判・調停で使える鑑定とは何か、査定書との決定的な違いを解説します。
裁判で査定書が通用しない理由
法的な裏付けがない
不動産会社の 査定額(売却の目安として示す予想価格) は、営業活動の一環であり、国家資格や法律に基づくものではありません。作成者や会社によって金額が変わり、根拠の透明性も担保されていないため、利害の対立する相手方を説得する証拠力を持ちません。
相手方から容易に反論される
査定書は「依頼者に有利に作られたのではないか」と反論されやすく、裁判所も価格判断の根拠として重くは扱いません。両当事者がそれぞれ査定書を出せば、金額が食い違うだけで、争点は解決しません。査定と鑑定評価の性質の違いは査定と鑑定評価の違いで整理しています。
私的鑑定と裁判所鑑定の違い
私的鑑定(当事者鑑定)
当事者の一方が、自ら不動産鑑定士に依頼して取得する鑑定評価書を 私的鑑定 といいます。訴訟の前の交渉や、訴え提起時に自分の主張を根拠づける資料として提出します。国の基準に従った公的な文書であるため、査定書とは比べものにならない説得力を持ちます。
裁判所鑑定
訴訟の中で、裁判所が中立の鑑定人を選任して行わせるのが 裁判所鑑定 です。判決の基礎として重視されますが、費用は当事者負担で、期間もかかります。まず私的鑑定で交渉を試み、決着しなければ裁判所鑑定に進む、という流れが一般的です。
鑑定が使われる主な場面
共有物分割
共有名義の不動産を分ける 共有物分割 では、価格の合意が最大の難所です。中立の鑑定評価が、分割方法や代償金の算定の土台になります。
賃料増減額
貸主・借主の間で適正な賃料が争われる 賃料増減額請求 では、継続賃料という専門的な評価が必要で、鑑定士の関与が事実上不可欠です。
立退料・損害賠償
建物の明渡しに伴う 立退料 の算定や、不動産に関わる 損害賠償 の額の主張でも、鑑定評価が根拠として用いられます。いずれも査定書では対応できない領域です。
弁護士との協働
役割分担
法律論の組み立ては弁護士、価格の判定は鑑定士——この役割分担がかみ合うと、主張の説得力が格段に高まります。当事務所は、弁護士の先生方と連携しながら、争点に沿った鑑定評価書を作成しています。
早めの相談が有利に働く
争点が固まる前の段階で鑑定士に相談しておくと、どの価格をどの手法で立証すべきかの見通しが立ちます。訴訟戦略の初期から評価の視点を組み込むことが、結果的に有利に働きます。
まとめ:法的効力ある評価を武器に
裁判・調停で価格を争うなら、法的効力を持たない査定書ではなく、鑑定評価書 を武器にすべきです。私的鑑定と裁判所鑑定を場面に応じて使い分け、弁護士と連携することで、主張は最も強くなります。
裁判・訴訟に伴う評価は裁判・訴訟のための鑑定で詳しくご案内しています。法的な手続きや訴訟戦略そのものは、最終的には弁護士にご確認ください。当事務所は、その主張を支える適正な価格評価を担います。まずはお問い合わせからご相談ください。初回相談は無料です。