法人が保有する不動産は、決算・組織再編・戦略立案のさまざまな場面で「今いくらの価値があるのか」を問われます。その 時価 をあいまいにしたまま処理を進めると、監査で指摘を受けたり、取引の妥当性を説明できなくなったりします。本稿では、法人が不動産の時価評価を必要とする代表的な場面と、鑑定評価書が果たす役割を整理します。
減損会計での時価
減損会計とは
減損会計(保有資産の収益力が低下したときに帳簿価額を引き下げる会計処理) では、資産が生み出す将来のキャッシュフローや、その資産の時価(正味売却価額)を見積もる必要があります。ここで不動産の時価が問われます。
帳簿価額と実勢の乖離
取得から年月が経った不動産は、帳簿価額と実際の市場価値が大きく乖離していることがあります。減損の要否や金額を適切に判断するには、第三者が検証できる客観的な時価 が欠かせません。鑑定評価書は、その根拠として監査法人にも通用します。
M&A・デューデリジェンスでの評価
買収価格の妥当性
企業の買収・合併(M&A)では、対象会社が保有する不動産の価値が、買収価格を大きく左右します。デューデリジェンス(買収前に対象資産を精査する調査) の一環として不動産の時価を把握し、簿価との差や含み損益を明らかにすることが、価格交渉の土台になります。
隠れたリスクの把握
土壌汚染の懸念、借地・底地の権利関係、遊休不動産の処分可能性など、財務諸表だけでは見えないリスクは、専門家による評価で初めて浮かび上がります。鑑定評価の過程は、こうしたリスクの洗い出しにもつながります。
CRE戦略とIFRSの時価
CRE戦略における評価
CRE戦略(企業が保有不動産を経営資源として最適活用する取り組み) では、保有し続けるか、売却するか、有効活用するかの判断が求められます。その判断は、各不動産の適正な時価と収益力の把握が前提です。
IFRSでの時価
国際会計基準(IFRS)を採用する企業では、投資不動産などについて時価(公正価値)の把握が求められる場面があります。国際的にも通用する評価の考え方に沿った鑑定評価が、開示の信頼性を支えます。
監査対応での鑑定評価書
客観性という価値
これらの場面に共通するのは、社内の見積もりだけでは客観性を担保できない という点です。経営者の判断が入り込む余地のある評価では、監査法人や取引相手を納得させられません。
独立した専門家の関与
不動産鑑定士は、国が定めた 不動産鑑定評価基準 に従い、独立した立場で時価を判定します。その鑑定評価書があることで、会計処理や取引の妥当性を対外的に説明できるようになります。鑑定評価書の性格や使い道は鑑定評価書とは何かで詳しく解説しています。
まとめ:客観的な時価が意思決定を支える
減損・M&A・CRE・監査対応——法人が不動産の時価を必要とする場面はいずれも、客観的で検証可能な評価 が意思決定の質を左右します。社内の概算にとどめず、独立した鑑定評価を土台に据えることが、リスクの予防につながります。
法人の資産評価は法人・企業のための鑑定で詳しくご案内しています。なお、具体的な会計処理や税務上の取扱いは、最終的には税理士や監査法人にご確認ください。当事務所は、その判断の土台となる適正な時価評価を担います。まずはお問い合わせからご相談ください。初回相談は無料です。